夏の情景

ギリシャはできたらアドリア海かイオニアの海で、海の見えるホテルで、おいしいものを食べ、早朝、誰もいないプライベートビーチでフルートを吹き、そして 昼間は泳いでゆっくりとしたいと思った。しかし写真を撮りながらの車の旅は、夕刻にそんな恰好なホテルに行き着くのは難しい。一日だけは、ギリシャ最南端 近のイオニア海に接するいいホテルを見つけた。しかし海の見える部屋は空いていなかった。夕刻といっても9時近く、泳ぎ終わった後、ひとりでフルートを吹 いているとビーチに現れた老婦人が軽く手を叩いて、会釈した。私も吹きながら軽く会釈を返した。老婦人は一人で沖まで泳ぎだした。朝食のとき、その老婦人 は一人でコーヒーを飲みながらまた会釈してくれた。亡くなる少し前にシチリアに旅した母を思い出した。その日はアドリア海の落日を見たいと思い、ギリシャ 西端の海岸を走ってみた。しかし砂浜ばかりで、翌々日の早朝にはギリシャを後にするのに、ここにとっまってはもったいないと思い、コリントまで走ることに した。落日に間に合う9時頃までにはつきたいと思い、走った。途中かなりの山岳地帯を走っている時、にわか雨が降り出した。夏の高い太陽が影を落とさない 状況では撮りにくいと思う私にも、オリーブの木にも恵みの雨だ。落日にはぎりぎり間に合った。この時間ではいいホテルに泊まるはもったいない、町中の安宿 に泊まった、日の出の古代コリントの遺跡(写真)の静けさは、昼間の観光客が大勢いる中では味わえない。

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